2008.11.10
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/saizensen/20081021-OYT8T00460.htm?from=os2
しばらく前の記事ですが、日本のお手本の一つになりそうで、とても参考になります。
記事が消去されては困るので、全文をコピー・ペーストして、下に示します。
信頼の医療 読売提言から
(上)介護・看護一体 24時間対応
福祉先進国デンマーク
24時間体制で要介護者からの緊急通報に応じるセンターのスタッフたち(コペンハーゲン市内) 本紙の医療改革提言では、高齢者ケアの充実をうたった。医療・介護を一体的に改革してきた北欧の先進事例を基に、日本の高齢者ケアの課題を探る。(安田武晴、写真も)
ボタン一つで通報
「どうしましたか?」
「ヘルパーがなかなか来なくて……」
「もうすぐ来ますから、安心して待っていて下さい」
デンマークのコペンハーゲン市が運営する緊急通報受け付けセンター。同市のほぼ全域をカバーし、在宅の要介護高齢者や障害者からの緊急通報に、オペレーターが24時間体制で対応する。
緊急通報機器を市から支給されている人は約7000人。ほとんどが一人暮らしだ。電話回線でセンターと結ばれ、ボタンを押すだけでオペレーターと会話できる。通報件数は1日平均約400件。急病や、転倒して起きあがれない場合のほか、「すきま風が入り寒い」「さみしい」といった緊急性の低い相談もある。
センターのパソコンには、通報機器を持っているすべての人の情報が入っている。通報を受けると同時に、名前、住所、家族の連絡先、健康状態、過去の緊急通報履歴などが画面に表示される。脳卒中や心臓病の患者の場合、文字が赤く表示され、オペレーターに注意を促す。
オペレーター全員、看護師などの資格を持ち、時間帯により2~5人で対応する。通報者との会話から現状を把握し、パソコン画面の情報を参考に、ヘルパーや看護師を派遣するかどうか判断する。深夜早朝は同センターのケアチームから、それ以外の時間帯は、各地域の在宅ケアチームからスタッフが向かう。実際に派遣するのは、全体の3分の1程度。急病の場合は、消防署に救急車の出動を要請する。
センター長のスティーン・ガストルプさん(54)は、「緊急性がない通報でも、本人にとっては重大なことかもしれないので、丁寧に対応する。安心感を持ってもらうことも、私たちの仕事」と話す。
国民の50%自宅で最期
デンマークでは、1974年に成立した社会支援法で、高齢者や障害者らに、必要な介護・支援サービスを提供することが市に義務づけられている。各市は80年代以降、緊急通報システムを含む、24時間対応の訪問介護・看護体制を整えていった。
以前は、施設や病院でのケアが中心だったが、施設や病院での生活が、高齢者の心身機能を低下させ、自立を損なうことが明らかとなり、在宅での24時間ケアが普及していった。同国統計局によると、07年、自宅に住んでいる高齢者約14万人が利用している。
日本の介護保険のように、訪問介護と訪問看護が別々のサービスになっていない。ヘルパーと看護師の混成チームが、担当区域内を巡回しながら、要介護者宅を定期訪問し、緊急通報による随時訪問にも柔軟に応じる。
在宅ケア事業は一部、民間事業者に委託されているが、ほとんどが市の運営で、ヘルパーや看護師も市の公務員だ。同国の在宅ケアを研究している看護師のレーネ・ホレンナーさん(60)は、「スタッフ間の連携がとりやすく、要介護者の心身状態の変化に柔軟に対応できる。家庭医の協力体制もしっかりしているので、国民の約50%が、自宅で最期をむかえることができる」と話している。
デンマーク
北欧の福祉先進国で、人口約547万人。65歳以上が約84万人。2007年の高齢化率は15.4%。地方自治は、98の市と5の広域行政機構で行われている。介護も医療も財源は税金で、介護は市、医療は広域行政機構が担当している。
(2008年10月21日 読売新聞)