2008.11.07
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20081105-OYT8T00191.htm
いつも言われる事ですが、「安かろう・悪かろう」では困ります。薬の事をすべてを安易に薬剤師に任せてしまうと、何かあった時の「結果責任」はすべて医師が被る事になります。薬剤師やその製薬企業、さらにジェネリックを推進する自治体がすべての責任を取ってくれるわけではありません。ですから、後発医薬品(ジェネリック)に変更するまたは新しく処方する時には、医師がすべてを理解した上で、ジェネリックの銘柄まで個別に指示しなくてはいけないのだろうと思います。医師の責任は重いのだと改めて認識する必要があり、薬物治療を適切に行える医師を育てる必要があるのだと思います。
後発薬 普及図る自治体
新薬と同じ効き目・低価格
ジェネリック医薬品を積極的に調剤する薬局も出てきた(東京都江戸川区で) 医師が処方する医療用医薬品のうち、新薬の特許が切れた後に発売される後発医薬品(ジェネリック医薬品)を普及させようとする取り組みが広がっている。有効成分は新薬と同じで価格は安いため、患者の負担が少なく、利用を促す自治体が増えている。医師に任せがちな薬について考えるきっかけにもなる。(西内高志)
神戸市の会社員(54)は7月、毎日服用している高血圧症の薬を後発医薬品に切り替えた。約5年間、新薬を使ってきたが、後発薬の発売を知り、かかりつけの医師に処方してもらった。年間約8800円だった薬代(調剤料など含まず)は、5500円ほどになりそうだ。男性は「不安もあったが、血圧は安定して違和感もない。日常的に飲む薬のコストが少しでも安くなるのは助かる」と話す。
後発薬は新薬と同じ有効成分で、ほぼ同じ効き目ながら、開発費が抑えられるため、価格は新薬の約2~7割と安い。しかし、普及率は数量ベースで16・9%(2006年度)。国は増え続ける医療費を節減するため、2012年度までに30%以上にする目標を立てている。
自治体なども、患者が後発薬を使いやすい環境作りを進めている。国民健康保険の保険給付費が増え、財政を圧迫しているからだ。
長野県中野市は今年3月末、「ジェネリック医薬品希望カード」を市内の全世帯(約1万5000世帯)に配布した。裏面には「ジェネリック医薬品でお願いします」と書かれ、病院や薬局で提示することができる。同市健康長寿課では、「医師に『処方してほしい』と口頭では言いづらいという人が多い。カードは提示すればよく、依頼しやすい」と話す。
茨城県常陸太田市も昨年5月に同様のカードを国民健康保険に加入した全世帯(約1万2000世帯)に配布。12月から今年5月にかけて、市職員が紙芝居を使って高齢者らに使い方などを紹介する出前講座も開いた。
広島県呉市は7月から、市内の国民健康保険の加入者に、「ジェネリック医薬品使用促進のお知らせ」を送り始めた。新薬から後発薬に切り替えた場合、1か月で削減できる薬代を毎月1回、約2000~2500人に通知している。初回に通知した人を対象にしたアンケート(回答1033人)では、半数以上が通知を機に後発薬への切り替えを依頼したか、今後切り替えを依頼する意向を持っていた。
新薬から後発薬に切り替えることで削減できる薬代を通知する取り組みは、日本航空健康保険組合(東京)など、健康保険組合でも登場している。
後発薬の情報誌「月刊ジェネリック」編集長の賀勢(かせい)順司さんは「行政などには、消費者が安心して後発薬か新薬かを選べるよう情報提供が求められる」と話している。
後発医薬品 新薬(先発医薬品)の特許期間(20~25年)が過ぎると、厚生労働省の承認を受け、他の製薬会社から発売される医療用医薬品。日本ジェネリック製薬協会によると、アメリカの普及率は63%、イギリスは59%。
医師、薬局に「安心」情報…厚労省が品質検査強化
後発薬がこれまで普及しなかった背景には、医師が新薬から後発薬への変更をためらうなど、医療機関側の事情もある。
「後発薬についての情報が少なく、『安かろう悪かろう』のイメージをぬぐいきれない医師も多く、普及の障害になっている」と、日本ジェネリック医薬品学会代表理事で医師の武藤正樹さんは指摘する。薬局にとっても、新薬と後発薬の両方の在庫を抱える経済的負担が大きく、場所の確保も難しいなどの面があるという。
厚生労働省は昨年10月、「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」を策定。〈1〉後発薬の品質検査を強化し、結果を公表する〈2〉後発薬の添付文書の情報を充実させるようメーカーに指導する――などの取り組みを始めた。
今年4月には、処方せんの様式が変更され、「後発薬への変更は不可」という欄に医師が署名や押印などをしない限り、薬剤師は患者の同意があれば後発薬を調剤することができるようになった。
ただ、効果はまだ上がっていないようだ。沢井製薬(大阪)が5月に、全国の薬剤師約300人を対象に行った調査によると、「後発薬への変更は不可」の欄に医師の署名がなかったのは48・1%。実際に、薬剤師が後発薬に変更したのは10・1%にとどまった。
武藤さんは「医師や薬剤師を変えていくために、患者も、自分の使っている薬に後発薬があるかどうかを十分に知る必要がある。後発薬をきっかけにして、医薬品そのものへの関心を高めれば、結果的に、良い医療を選ぶことにもつながっていく」と話す。
後発薬の種類や、処方・調剤に積極的な医療機関や薬局は、同学会が運営するホームページ「かんじゃさんの薬箱」(http://www.generic.gr.jp/)で検索することができる。
(2008年11月5日 読売新聞)