2008.12.25
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/saizensen/20081217-OYT8T00480.htm
特に65歳以上、肺炎などの重症感染症にかかった事がある、心臓・腎臓・肝臓などの重要臓器に障害がある、糖尿病やその他の免疫機能低下がある、肺炎を起こしたときにその治療を難しくする障害がある、等の方には、是非とも肺炎球菌ワクチンの接種をお勧め下さい。肺炎の原因菌の約4割が、この肺炎球菌であるとの統計があります。
栃木県内に、肺炎球菌ワクチン接種料金の補助を行っている市町村は、残念ながらまだありません。
(下)健康への関心 住民意識高まる
ワクチン接種を勧める清水医師(右、長野県波田町の波田総合病院で) 肺炎で亡くなる65歳以上の高齢者は、2007年に10万6000人に達した。自治体の中には、肺炎を引き起こす細菌に感染するのを予防するワクチンに注目し、接種代の一部を公費で助成する取り組みが広がっている。06年度に開始し、75歳以上の半数近くが接種を終えたという長野県波田(はた)町を訪ねた。(内田健司、写真も)
肺炎予防 ワクチン接種を公費助成
1回で5年以上持続
「まだまだ元気だけど、病気になって迷惑をかけてもいけない。知り合いも打ったと聞いたし……」。麻田弘子さん(77)は今年9月、先延ばしにしてきた肺炎球菌ワクチンを接種した。12月になって、インフルエンザワクチンも接種し、「これで安心」と話した。
肺炎球菌ワクチンの接種は、同町の医療機関では1回6000円。2000円は町が助成するため、窓口で支払うのは4000円だ。2回打つと副作用が強く出る心配もあり、国内では一生に1度しか打てないが、1回接種すれば5年以上免疫が持続するとされている。
町では助成の対象を75歳以上としたが、元気な高齢者も多く、接種を遅らせる人も少なくなかった。これに対し、町の保健師、忠地(ただち)弥生さんらが、「体力のあるうちに肺炎球菌の免疫をしっかりつけておけば、肺炎にかかっても重症化しない」と呼びかけ、接種者は着実に増えてきた。
町が助成を始めたきっかけは、町立波田総合病院(215床)で05年、肺炎が悪化した高齢者の患者でベッドが埋まり、救急患者も受け入れられない事態に直面したことだ。その年、県の救急センター救急部長から転身してきた、清水幹夫・救急総合診療科長が、肺炎の入院患者の年齢分布や経年変化を分析し、75歳を境に入院患者が顕著に増えていたことが分かった。
全員の受診状況把握
清水医師は、高齢者が肺炎で入院すると、1日あたり平均2万8690円の医療費がかかると算出。肺炎球菌ワクチンの接種により、患者が減れば、将来の医療費が抑制されるだけでなく、町民の健康寿命が伸びる効果が期待できることから、町に接種代を助成することを働きかけた。
導入初年度は75歳以上の全員に接種を呼びかけた。07年度以降は、新たに75歳になった人と未接種者を対象に、町は毎年150人分にあたる30万円を予算計上してきた。
町では75歳以上全員の受診状況を把握し、情報が伝わりにくい独り暮らしや高齢者のみの世帯には、民生委員が直接出向いて、ワクチンの接種を勧める。高齢者の介護予防には、口腔(こうくう)ケアも欠かせないとして、非常勤の歯科衛生士が、その年に80歳になる高齢者を戸別訪問して歯磨きなどを指導する取り組みも進めているが、対象者が未接種者だと、ワクチンの効果などを説明している。
約半数が接種
高齢者が、インフルエンザとどちらのワクチンを打ったか勘違いしないよう、本来は季節に関係なく接種できる肺炎球菌ワクチンの接種は、毎年6月から10月の間に限定。これまで対象者1651人中、754人(45・7%)が接種した。
助成開始後、75歳以上で亡くなった町民約200人の死因を見ると、肺炎が20人いるが、未接種者が9割を占め、接種後に肺炎で亡くなる率が低くなっている。
肺炎球菌ワクチンの接種に助成した自治体数は全国で80以上と見られるが、清水医師は「医療機関だけで接種を普及させるのは難しい。ワクチン接種の効果を実感するまでには至っていないが、行政と一体となった取り組みが必要だ。肺炎にかからないようにしようという住民の意識が高まってきた」と手応えを語る。
町では現在、松本市との合併協議を申し込んでいるが、野村睦広住民福祉課長は「高齢者が自分の健康に関心を持ち、肺炎球菌ワクチンを接種することで、生活での安心感が生まれている。これからも助成事業は継続させてほしい」と話している。
(2008年12月17日 読売新聞)