お知らせ

  • 基準値にとらわれ「過ぎ」ない

2009.04.30

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20090422-OYT8T00268.htm

特定健診導入の時には全く聞かれなかった冷静な意見が見られるようになりました。立場のある方が、もっと早いうちに、もっと積極的に発言して頂けないと困ります。


[Q&A]基準値にとらわれない


浜松医大教授(健康社会医学)尾島 俊之(おじま としゆき)さん 生活習慣病予防を目的とする特定健診への評価や今後の課題について、浜松医大教授の尾島俊之さんに聞きました。




 ――特定健診が始まり、1年がたちました。

 「この健診の導入で、国民にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という言葉が浸透し、健康を意識する人が増えました。そういう意味で、新しい健診制度は評価できます。ただ、初年度は、現場での準備に手間取ったことなどから、健診の開始時期が遅れ、生活習慣改善を促す保健指導が年度内に始められなかったところもありました」

 ――国は、特定健診や保健指導の実施率などの目標値を決めています。目標を達成できなかった自治体や企業の健康保険組合などには罰則として、今後、高齢者に対する医療制度への負担金を増やすとしています。

 「努力目標として数値を決めるのはいいことですが、国の目標値を達成できない自治体などは多いと思います。財政負担が増えると、ますます満足のいく健診が行えなくなり、自治体などの間で格差が広がる恐れがあります。罰則を科すという仕組みは改めるべきです」

 ――健診の基準値に対する異論も出ています。

 「検査数値が悪くなると、病気になる危険度が上昇するのは確かです。しかし、判定基準の値をいくつにするかは、専門家の間でも考え方が異なります。基準をちょっと上回った、あるいは下回ったという程度では、病気になる危険度はほとんど変わりません。数値を良くしようという心がけが大切で、振り回される必要はありません」

 ――生活習慣を変えることは簡単ではありません。

 「保健指導を通じて仲間ができ、いっしょにウオーキングなどを楽しめるようになるといいですね。また、保健指導の場に、健康な人も参加してもらい、どのような生活をしているか、どうやって禁煙したかなどを語ってもらうのもいいと思います」

 ――社会全体の取り組みも必要ですね。

 「安全に歩ける道路を増やすなど、社会的な環境整備を進めてほしいです。スーパーなどでは、体にいい食べ物の値段を下げ、反対に脂肪や塩分の多いものは高くするなどの仕組みを作ってはどうでしょう。個人に対する指導と社会環境の整備の2本立てで進めると効果的です」(利根川昌紀)

(2009年4月22日 読売新聞)