2009.06.23
http://www.asahi.com/health/news/TKY200906080353.html
患者さんは病院から追い出され、かといってその受け皿となる老人ホームが増えず、そうこうしているうちに介護が必要になる人口が増え、と早めに手を打たないと取り返しのつかない事態になることは、容易に推測できます。
介護施設整備、計画の半分 補助減響く 06~08年度
2009年6月8日23時10分
介護保険施設の整備率
全国の自治体が06~08年度に、特別養護老人ホーム(特養)など介護保険施設の定員を約15万2千人分増やす計画を立てていたのに対し、実際は計画と比べて半分以下の約7万5千人分にとどまったことが、朝日新聞社の集計で分かった。既存の施設の定員削減により、計画を大幅に下回ったところもあった。
市区町村は3年ごとに介護サービスの利用量を予測し、新たに増やす施設(5種類)の定員数を決定。社会福祉法人などが都道府県や市区町村の認可を得て建設する。
4月に都道府県を通じて計画と実際の整備状況を調査。特養は06~08年度に5万4千人分定員を増やす計画だったが、実際に増えたのは72%の約3万9千人分。東京や千葉、大阪は50%を切った。大幅に不足しているため、入居できずに自宅などで待機している人は、未集計の鹿児島と岡山(岡山市のみ回答)を除いて全国で約36万人いる。
介護老人保健施設は約2万8千人分の計画に対して68%の整備率で、有料老人ホームなどは約3万人に対して44%だった。介護保険を使わない人も利用できるホームなどは集計対象から除いた。認知症の人向けグループホームは約2万9千人に対して95%の整備率だった。
施設整備が進まない背景には、建設時の補助金削減や運営費に充てる介護報酬の引き下げが響いている。特養の全国協議会事務局長を務める福間勉さんは「建設費などコストが高いうえに、以前ほど行政の補助金が出ない。介護保険の報酬や利用者から徴収する費用だけでは採算ベースに乗りにくく、手を挙げる業者自体が少ない」と話す。
従来は特養をつくる際は国が建設費の2分の1、都道府県が4分の1の補助金を出していたが、三位一体改革で国の補助金は04年度で廃止。税源が地方自治体に移されたが、財政が厳しい都道府県は介護施設に対する補助金を抑制しがちだ。滋賀は06年度、特養の整備費補助を1床あたり約40万円減額した。
介護事業所の収入の柱の介護報酬は03、06年度と2回続けて引き下げられてきた。
また、介護ケアと医療の両方が必要な高齢者が長期入院する療養病床(介護型)は、計約1万1千人分増やす計画だったが、06年に国が医療費削減のため介護型を全廃する方針を打ち出したことで、逆に2万4千人分減った。
整備率を都道府県別で見ると、7道県がマイナスだ。計画していた定員数が200人程度と少なかった愛媛は、療養病床が700近く減ったためマイナス300%を超えた。
介護保険サービスを利用する高齢者にとって、保険料を徴収されているにもかかわらず、必要なサービスを受けられない状況だ。
厚生労働省は、介護保険施設の整備は自治体側の責任だとしたうえで、「介護報酬の引き下げや介護の人材不足などで、施設建設に手を挙げる事業者が減り、整備がうまく進まなかった」としており、09年度補正予算で3千億円を投入し、3年間で16万人分の施設建設を目指す。(根本理香、及川綾子、太田啓之)